医師事務作業補助者の仕事内容をわかりやすく解説

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医療事務系の中でも特に需要が高く人気もあって注目されてきている医師事務作業補助者ですが、いまいち仕事内容がよくわからないということはありませんか?

医師の事務作業を補助するために配置される医師事務作業補助者には、その目的をスムーズに遂行できるよう仕事内容が限定されています。

この記事では、10年以上医療事務系やそれらの教育機関での業務の経験を持つ私が、医師事務作業補助者が行うとされている仕事内容を明確にしていきます。

医師事務作業補助者は今後ますます必要とされてくる職種となりますので、ぜひ最後までお読みいただき、一人でも多くの方に医師事務作業補助者となることを後押しできましたら幸いです。



まずは医師事務作業補助者の概要を提示します。

『医師事務作業補助者は、病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に対する体制を確保する目的として、(中略)医師の事務作業を補助する専従者を配置している体制を評価するものである』
※社会保険研究所『医科点数表の解釈』より引用

ということが明記されているように、医師の業務負担を軽減すべく、従来医師がおこなっていた事務作業をサポートすることが存在目的です。

では具体的に医師事務作業補助者にはどのような業務内容があるのか、1つ1つ解説していきます。

できるだけ専門用語などの意味を補足していきながら、わかりやすく説明しておりますので、読みやすくなっています。

また医師事務作業補助者については別の記事でも記載しておりますので、そちらも併せてご参照ください。

1.医師事務作業補助者の仕事内容

まずは医師事務作業補助者が行う業務とされているものを列挙し、説明していきます。

医師(歯科医師を含む)の指示の下に

  • 診断書などの文書作成補助
  • 診療記録(カルテなど)への代行入力
  • 医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、医師等の教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)
  • 行政上の業務(救急医療情報システムへの入力、感染症サーベイランス事業に係る入力等)

これらの対応に限定するとあります。

国家資格ではないにも関わらず、ここまで明確に業務内容の範囲を定めている職種もなかなか珍しいものです。

医療機関での「なんでも屋」的な位置づけとなる医療事務の方よりだいぶ守られている印象を受けます。

それでは各業務内容を一つずつみていきましょう。

1-1.診断書などの文書作成補助

こちらが医師事務作業補助者の業務の中でも最もポピュラーなものとなります。

患者さんは手術を受けたり入院をすると、患者さん自身が加入している医療保険などの診断書を保険会社(例:「かんぽ生命」や「アフラック」など)に提出することで、一定の給付金が支給されます。

よくテレビCMで「手術一回につき、〇万円、入院一日につき〇千円」などといった保険に加入されているケースです。

その給付金を支給されるために必要な診断書を記載するのが医師の業務なのですが、これがたくさんの量があって大変なのです。

私が勤めていた病院では、医師事務作業補助者の業務時間のほどんどが診断書作成に費やされていました。

それほど大きくない一般的な規模の病院(病床数199床以下)であっても、手術は月100件程度は行うでしょうし、入院患者さんも300人程度は新しく入院してきます。

このように作成しなければならない診断書の量は多いですが、要領をつかめばそれほど難しいことはありません。

診断書の記載すべき各項目に応じて、カルテを読んで必要な部分を記載していくだけなので、慣れてくれば1枚の診断書作成にかかる時間も10分程度で完成さえることも可能でしょう。

1-2.診療録(カルテなど)への代行入力

診療録(以下:カルテ)の代行入力は主に外来診療でよくみられますが、医師が患者さんの診察をしている側で、カルテを代わりに記載します。

現在では紙のカルテではなく、主にパソコンで管理されている電子カルテに入力していくこととなります。

例えば高齢の医師である場合、今まではずっと手書きのカルテに書いていたためパソコンのキーボード打ちが極端に遅い方もたくさんいらっしゃいます。

しかし、だからといって病院が電子カルテを導入した以上、自分1人だけ紙のカルテに手書きで書くわけにはいきません。

そのような医師のカルテ入力のサポートを行うのです。

医師が患者さんに話している内容をそのまま入力するだけでいいですし、電子カルテには「定型文」もたくさん用意されているので、それらをマウスで選択してクリックしていくだけでよいことがほとんどです。

もとより、医師自身もキーボードを手打ちして1から10までカルテを記載するというよりは、定型文を選んで入力していることがほとんどです。

患者さんと関わりたい方にはおすすめのポジションです。

1-3.医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、医師等の教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)

こちらは少々範囲が広いため、一つずつ分けて説明していきます。

1-3-1.診療に関するデータ整理

日常の診療のデータを、必要な時にいつでも医師や医療スタッフ、もしくは患者さんに提供するためにまとめて整理しておきます。

ただ単に患者さんの診療を行っているだけではデータが散らかってしまいますので、欲しいときにほしいものがすぐに取り出せるよう、日々のデータ整理が重要となりますので、医師事務作業補助者の活躍が期待されます。

ですが、この業務の専門家として「診療情報管理士」という職種が病院には大抵1人は配置されているでしょうから、診療情報管理士の方と協力しながらデータ整理を行っていくことが大切です。

1-3-2.院内がん登録等の統計・調査

医療の発展のため、がんや難病の疾患などを関係各所に報告する必要がある症例があります。

たとえばがん登録に関していえば、求められたフォーマット(様式)に従い、記載や入力をして届出をするのです。

ですが、がん登録は診断書作成のような比較的転記がメインとなる業務ではなく、がん登録専門の知識が必要になってきます。

そのため大半の病院で医師自身ががん登録を行っている例は少なく、診療情報管理士の業務として扱っている病院が多いです。

万が一、がん登録が医師事務作業補助者の業務として割り振られたとしても、国立がん研究センターなどが主催する勉強会や試験が多数ありますので、学習する機会には困りません。

そちらをクリアして

「がん登録実務初級者」

を目指しても良いでしょう。

1-3-3.医師等の教育や研修

教授や院長、また医長など、呼称やランクは様々ですが、上級の医師には後輩や研修医の医師を指導・教育する役目も担っています。

若手の先生方に対して講義を行ったり、座学を実施することもあるでしょうから、それらに用いる教材や資料の準備を医師事務作業補助者が代わりに行うということです。

1-3-4.カンファレンスのための準備作業

カンファレンスとは、主に患者さんの治療方針について医師・看護師やその他医療スタッフの人たちで話し合う場のことです。

事前に資料を準備したり、患者さんの情報をまとめたりする必要がありますので、そういった作業を医師の代わりに行うのです。

医師が指示する資料をプリントアウトして準備する程度であれば難しいことはありませんが、医師によってはカンファレンスの資料の作成さえも要求する可能性もありますね。

あまりに専門知識が求められることは難しいため、そういった場合は医師事務作業補助者の上司に相談しましょう。

1-4.入院時の案内等の病棟における患者対応業務及び行政上の業務(救急医療情報システムへの入力、感染症サーベイランス事業に係る入力等)

1-4-1.入院時の案内等の病棟における患者対応業務

この項目は令和2年度の診療報酬改定で追加された文言です。

ナースステーションなど病棟で医師事務作業補助業務を行っていると、患者さんから声をかけられることもあるでしょう。

看護師さんも手いっぱいで、対応できるのが医師事務作業補助者の方しかいないという状況では対応せざるを得ません。

そんな現場の声を反映させ、改定で盛り込んだのではという経緯が想像できます。

入院に慣れている患者さんは少ないので、懇切丁寧に対応するようにしましょう。

ただ、医師事務作業補助者の病棟での患者対応が追加されたからといって、そればかりを担当させていては本来の医師の事務作業をサポートできませんので適度に抑えましょう。

1-4-2.救急医療情報システム

救急医療情報システムは、救急車で搬送された患者さんの状況や症状を専用のコンピュータ端末で入力する業務です。

深い医学知識が求められる業務ではありませんので、救急患者の受付を行い件数を把握している医事課職員が担う傾向にあります。

そのため、医師事務作業補助者が救急医療情報システムの入力を行うことは少ないと考えます。

1-4-3.感染症サーベイランス事業

感染症サーベイランス事業とは、感染症の制御や予防対策に用いることを目的として感染症を分析するためそれぞれの病院で確認した感染症患者の情報を国などに届け出る業務を指します。

このブログを記載している時点では新型コロナウイルスが猛威を振るっています。

新規に発生した患者の情報を、国(保健所等)に対する報告も病院としての責務ですので、そういった報告書などの作成から報告までを医師事務作業補助者が担当することもあるでしょう。

ただ、これらの業務はスピードが重視され、すぐさま報告する必要があるため、医師が診療をした患者がそのような報告対象の症例だった場合、医師事務作業補助者ではなく病院の窓口となる医事課が担う方が多いでしょう。

2.おわりに

このように医師事務作業補助者の仕事内容を1つ1つ噛み砕いてみていくと、「私にもできそう」だと感じてもらえたかと思います。

なにより医師事務作業補助者には、6か月の研修期間と32時間の研修をしっかりと行うことが明記されていますので、病院側はちゃんと実践してくれるはずです。

この記事を読んで、1人でも多くの方が医師事務作業補助者になろうかなと少しでも感じてもらえたのならとても嬉しく思います。

これからどんどん注目が高まる医師事務作業補助者となって、一緒に日本の医療の一翼を担いましょう。

最後に、病院の規模や方針、組織編制などによって医師事務作業補助者の業務は異なりますので、一概に全ての病院がこの記事に書いてある通り医師事務作業補助者を運用しているということではありませんので、ご了承ください。

 

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