医師事務作業補助体制加算の1と2の違いについて解説【令和2年度改定】

医師事務作業補助体制加算 医師事務作業補助者

医師事務作業補助者を配置することで算定することができる「医師事務作業補助体制加算」。

医師事務作業補助体制加算には1と2があり、両者には明確な違いがあります。

本記事では、医師事務作業補助体制加算の1と2の違いについて解説していきます。

両者の違いをしっかりと把握し、できることなら点数の高い「1」で算定していくように心がけましょう。



医師事務作業補助者を雇用して医師の事務作業をサポートしてもらいつつ、医師事務作業補助体制加算を算定するなら、点数が高い「1」の方を算定したいと考えるのは当然ですよね。

ご安心ください。
“本来の医師事務作業補助者の業務”を全うしてもらおうとするならば「1」を算定することができます。

はじめに医師事務作業補助体制加算の点数や各区分の要件から説明していきますので、既にご存じの方は3の項目から読み進めてください。

1.医師事務作業補助体制加算の点数

まず医師事務作業補助体制加算の点数を挙げていきます。

点数は令和2年の診療報酬改定が行われた最新の点数です。

A207-2 医師事務作業補助体制加算(入院初日)
医師事務作業補助体制加算1
イ 15対1補助体制加算 970点
ロ 20対1補助体制加算 758点 
ハ 25対1補助体制加算 630点
二 30対1補助体制加算 545点
ホ 40対1補助体制加算 455点
へ 50対1補助体制加算 375点
ト 75対1補助体制加算 295点
チ 100対1補助体制加算 248点

医師事務作業補助体制加算2
イ 15対1補助体制加算 910点
ロ 20対1補助体制加算 710点 
ハ 25対1補助体制加算 590点
二 30対1補助体制加算 510点
ホ 40対1補助体制加算 430点
へ 50対1補助体制加算 355点
ト 75対1補助体制加算 280点
チ 100対1補助体制加算 238点

医師事務作業補助体制加算の施設基準を満たすことでこれらの点数を、入院患者さんに入院初日に限り算定することができます。


こうしてみると、医師事務作業補助体制加算は本当に大きな点数であることがうかがえます。

 

2.各区分における配置基準の要件について

「15対1」や「20対1」はその病院が届出をしている「許可病床数(ベッド数)」に対して何人の医師事務作業補助者を配置しているかということです。

たとえば、150床の許可病床数を持つ病院で15対1を算定したい場合、医師事務作業補助者を10人配置する必要があります。
(割り切れない場合は四捨五入した人数を配置してください)

ただ、病床数に対して基準を満たす人数の医師事務作業補助者を配置するだけではなく、それぞれの区分に応じた要件が細かく設定されています。

以下にその基準を条文から転記していきますが、これらは医師事務作業補助体制加算1と2で共通の部分であり、1と2のどちらを選択するにしても要件を満たす必要があります。

2-1.15対1補助体制加算の施設基準

次のいずれかの要件を満たしていること。

  • ア.「救急医療対策事業実施要綱」に規定する第三次救急医療機関、小児救急医療拠点病院又は「周産期医療の体制構築に係る指針」に規定する総合周産期母子医療センターを設置している保険医療機関であること。
  • イ.年間の緊急入院患者数が800名以上の実績を有する病院であること。

2-2.20対1、25対1、30対1及び40対1補助体制加算の施設基準

次のいずれかの要件を満たしていること。

  • ア.「(1)15対1補助体制加算の施設基準」を満たしていること。
  • イ.「災害時における医療体制の充実強化について」(平成24年3月21日医政発0321第2号)に規定する災害拠点病院、「へき地保健医療対策事業について」(平成13年5月16日医政発第529号)に規定するへき地医療拠点病院又は地域医療支援病院の指定を受けていること。
  • ウ.「基本診療料の施設基準等」別表第六の二に掲げる地域に所在する保険医療機関であること。
  • エ.年間の緊急入院患者数が200名以上又は全身麻酔による手術件数が年間800件以上の実績を有する病院であること。

2-3.50対1、75対1及び100対1補助体制加算の施設基準

次のいずれかの要件を満たしていること。

  • ア. 「(1)15対1補助体制加算の施設基準」又は「(2)20対1、25対1、30対1及び40対1補助体制加算の施設基準」を満たしていること。
  • イ. 年間の緊急入院患者数が100名以上(75対1及び100対1補助体制加算については50名以上)の実績を有する病院であること。

ここまでは医師事務作業補助体制加算の1と2で共通のルールです。

なお、文中にある「緊急入院患者数」には、救急車で搬送された患者や意識障害や緊急手術が必要な患者など定義がありますが、詳しくは条文をご確認ください。
令和2年3月5日 保医発0305第2号

 

3.医師事務作業補助体制加算1を算定するのに必要な条件

上記までの要件を満たしておけば、医師事務作業補助体制加算の2は算定することができます。

では、より点数の高い医師事務作業補助体制加算1を算定するにはどうすればいいのでしょうか。

それは

「医師事務作業補助者の延べ勤務時間数の8割以上の時間において、医師事務作業補助の業務が病棟又は外来において行われていること」

これを満たしていることが医師事務作業補助体制加算1を算定する要件となります。

ちなみに「勤務時間数の8割以上」とは、医師事務作業補助者全員が8割以上の条件を満たす必要があります。
(厚生労働省保険局医療課 疑義解釈資料の送付について(その2) 平成26年4月4日事務連絡)

たとえば「Aさんは10割だがBさんは6割で平均して8割」という配分はダメということです。

3-1.病棟及び外来の定義

そして病棟及び外来の定義については、以下のように定められています。

  • ア 病棟とは、入院医療を行っている区域をいい、スタッフルームや会議室等を含む。ただし、医師が診療や事務作業等を目的として立ち入ることがない診断書作成のための部屋及び医事課等の事務室や医局に勤務している場合は、当該時間に組み込むことはできない。
  • イ 外来とは、外来医療を行っている区域をいい、スタッフルームや会議室等を含む。ただし、医師が診療や事務作業等を目的として立ち入ることがない診断書作成のための部屋及び医事課等の事務室や医局に勤務している場合は、当該時間に組み込むことはできない。

つまり、医師事務作業補助者の方は医師の近くである病棟や外来で業務を行うことで、医師事務作業補助体制加算1を算定することができるということです。

医師から離れた医師事務作業補助者専用の事務室などにこもって作業していては、医師のサポートがしにくいという考えからか、このように業務を行う場所が規定されています。

3-2.業務内容による例外

ですが、以下のような但し書きもあります。

ただし、前段の規定(※上のアとイのことです)にかかわらず、医師の指示に基づく診断書作成補助、診療録の代行入力及び医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、医師等の教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)に限っては、当該保険医療機関内における実施の場所を問わず、病棟又は外来での医師事務作業補助の業務時間に含めることができる。

ここに列挙されている業務は、以下のように医師事務作業補助者の業務として定められているものです。

  1. 診断書などの文書作成補助
  2. 診療録(カルテなど)への代行入力
  3. 医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、医師等の教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)
  4. 入院時の案内等の病棟における患者対応業務及び行政上の業務行政上の業務(救急医療情報システムへの入力、感染症サーベイランス事業に係る入力等)

3と4の業務は但し書きに含まれていないため、業務を実施する場所が病棟や外来に限られます。

3-3.3-1と3-2を総合した結果

これらを踏まえ総合的に考えると、

「本来の医師事務作業補助者の業務ならば、ほとんど場所を選ばずに医師事務作業補助体制加算1に必要な『8割以上の時間』としてカウントすることができる」

ということになります。

わかりやすく一覧表にまとめました。
医師事務作業補助者

医師事務作業補助者がやってはいけない業務や、やってはいけない業務に明記されていないグレーな業務はどこでやろうとも8割の時間には含めることができません。

 

4.本記事のまとめ

  • 医師事務作業補助体制加算1と2の違いは業務を行う場所である
  • 医師事務作業補助業務の8割の時間を病棟や外来で行う必要がある
  • だが医師事務作業補助者に定められている業務の大半は場所を限定されない

つまり、ずるい考えをもって医師事務作業補助者の業務に規定されていない業務や雑用などさせないで本来の目的通り、しっかり医師の事務作業を補助させることに注力してもらえば、普通に医師事務作業補助体制加算1を算定できるという考えですね。

 

5.おわりに

ここまで医師事務作業補助体制加算の1と2の違いを明確にし、1を算定するための方法を述べてきました。

本記事で記載してある内容は、あくまで医師事務作業補助体制加算が算定できる前提のもと、医師事務作業補助体制加算の1と2の違いを記したのであり、他にも準備すべき書類や体制、委員会などが施設基準がで定められています。

以下の診療報酬算定の条文から要件を確認し、しっかりと満たすようにしてください。
参考・引用元:令和2年3月5日 保医発0305第2号

医師事務作業補助者を雇用して医師の業務をサポートしていただければ、医師募集でも強みとしてアピールすることができます。

積極的に医師事務作業補助体制加算1を算定していくように体制を整えていきましょう。

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