選定療養費とは【2022年10月1日改定】

選定療養費とは 医療費

皆さんが風邪をひいたりケガをしたりすると、近くの医療機関に受診しますね。

その場合、日本人の多くの人の考え方として、

何かあった時に小さい診療所では心配だから、大きな病院に受診しよう

という大病院志向からくる心理が働き、大したことのない症状であっても最初から大きい病院を受診する傾向にあります。

ですがこれは得策とは言えず、選定療養費という無駄な費用がかかってしまいます。

この記事では、医療事務員として15年以上のキャリアを持つ筆者が選定療養費について解説し、適切に病院を受診する手順をお伝えしていきます。

これを読むことで日本の医療制度の仕組みを理解することができ、無駄な医療費を支払わずに済むようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.医療の区分け

まず本題に入る前に、日本の医療体制についてみて見ましょう。

日本の医療は以下の通り一次・二次・三次医療に分けられます。

  • 一次医療・・通常の外来診療を行う 診療所、クリニックなど
  • 二次医療・・入院や手術が必要となるような医療を担う 市民病院など
  • 三次医療・・高度な医療を提供する 特定機能病院、大学病院など

医療圏

このように分類されています。

つまり、風邪やケガなどのちょっとした症状に対する医療は、一次医療である診療所が担うのがセオリーです。

ですが、上記のとおり、日本人の多くが「大病院志向」を持っているため、簡単な症状であっても二次医療や三次医療を提供する病院に受診することで、

「数時間もの待ち時間と2分で終わる診察」

といった状況を患者さん達自身で生み出してしまっているのです。

 

2.選定療養費とは

このような状況では、二次医療や三次医療を担う市民病院や大学病院が簡単なケガや風邪の対応に追われてしまい、本来の役割である救急医療や高度な手術、また研究などに時間が割けなくなってしまいます。

そういった患者さんの受診状況を抑制するために、大きな病院は「選定療養費」という費用を設定しています。

選定療養費とは、
診療所からの紹介状無しにいきなり大きな病院を受診した場合、普通の医療費にプラスして保険のきかない費用(=選定療養費)を請求することができるのです。

※「選定療養費」の中には初診、再診時に算定するもの以外にもたくさんありますが、今回は割愛します。

その額は病院にもよりますが、概ね3,000円から高いところでは10,000円を超す設定をしている病院もあります。

もちろん10,000円の選定療養費を支払ったからといって、手厚い待遇やより良い医療が受けられるといったことはありません。

この選定療養費を設定することによって大きな病院は、

紹介状無しにいきなりうちに来るなよ」という姿勢を示すのです。

決してその選定療養費で儲けようとは思っていません。あくまで受診の抑制が目的です。

 

3.病院の規模等による違い

本記事で扱う「大きな病院」とは、200床以上の病院です。

「床」とはベッド数で入院患者が入院できる数を表しており、200床以上のベッド数を持つ病院が選定療養費を設定し患者さんから徴収することができるのです。

3-1.199床以下の病院

上記の逆を言えば、199床以下の病院は紹介状がなくても選定療養費がかかりませんので、診療所のような受診のしかたができます。

3-2.200床以上の一般的な病院

200床以上の病院から選定療養費が発生しますが、費用は病院によって異なるため、ホームページで確認するなどしてください。

1,000円程度から徴収される傾向にあります。

3-3.特定機能病院及び地域医療支援病院

200床以上の病院の中でも更に特定機能病院及び地域医療支援病院だと、選定療養費として7,000円以上の金額を設定することが明記されています。

※ただし、さすがに取りすぎだと考えたのか、7000円の選定療養費が発生した場合は初診料から200点が減算されます。現場は説明など大変ですね(苦笑)。

その上これらの病院は、再診でも選定療養費がかかるケースもあり、最低でも3,000円かかります。

病院のホームページには病院の種別や選定療養費に関する情報が必ず載っていますので、事前に確認しておきましょう。

 

4.2022年度厚生労働省通達

特定機能病院や地域医療支援病院の選定療養費の設定は、2022年10月に厚生労働省よりお達しがあり、費用が増加しました。

また特定機能病院等に加え、2023年3月頃を目途として一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関も特定機能病院等のように高額な選定療養費を徴収してくるようになります。

もしかしたら、今まで1,000円程度の選定療養費だった医療機関がこの紹介受診重点医療機関に該当することにより、一気に7,000円まで膨れ上がるといったことも可能性としては十分考えられます。

詳細は以下のページに載っていますのでご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000963828.pdf

 

5.選定療養費を節約するために

大きな病院で選定療養費を支払わないで済むためには、「紹介状」が必要です。

ですので、選定療養費を節約するためにも、些細なケガや病気ではまず診療所を受診してください。

診療所の先生に診察してもらい、簡単な検査をして薬をもらったけれども、それでもよくならないようであれば、紹介状を書いてもらって大きな病院を受診してください。

診療所というワンクッションを挟んだとしても、トータルでは費用も時間も抑えることができるケースがほとんどです

診療所で事足りるのならばそれに越したことはありませんしね。

厚生労働省も医療機関の受診の仕方について以下の通り、一次医療としての診療所からの受診を推奨していますので心がけてみてください。

5-付録.選定療養費のQ&A

Q1.選定療養費を支払えば早く見てもらえるの?
A1.選定療養費を支払ったからといって、診察の順番が前後することはありません。
※随時更新

 

6.おわりに

ちょっとしたケガや病気の受診はまず診療所から

医療の提供を受ける際、皆さんが1人ひとり適切な受診を心がけることで、多くの人がまんべんなく医療を受けることが可能となります。

緊急時には焦ってしまいますから、日ごろから近隣の診療所や病院などの情報を整理しておき、その時の症状に見合った医療機関を即座に選択できるようにしておきましょう。

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