診療所と病院の違いを解説【それでも選定療養費を払いたい方へ】

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初診で診療所からの紹介状なく大きな病院を受診すると支払わなければならない選定療養費」。

しかし選定療養費は、診療所と病院の役割を正しく理解していればいかに無駄な出費であるかが明確となります。

この記事では、10年以上にわたり医療事務員として病院に勤務する私が診療所と病院の違いを比較していきながら、

本当に選定療養費を払ってまで初診で大きな病院を受診することは無駄なのか!?

これについてお伝えしてきます。


大きな病院で請求される初診時の選定療養費を無駄に支払わないためにも、「ちょっとしたケガや病気の受診はまず診療所から」と、過去の記事でご紹介しました。

過去記事を要約しますと、

診療所からの紹介状なく大きな病院を受診すると「選定療養費」が無駄にかかってしまいます。

その額は病院によって異なりますが、1,000円から10,000円程度にまでのぼります。

そのため、大したことのない症状なのに「何かあってからでは遅いから、最初から大きな病院を受診しよう」という考えでいきなり大きな病院を受診することは、

費用の面でも時間の面でもデメリットが多く推奨しない!

ということです。

つまり、「選定療養費は無駄でしかない」ということに対しては過去の記事で概ね答えが出ているのですが、今回は診療所と病院の違いを踏まえつつ、より具体例を交えていきながら説明していきます。

これを読むことで「まずは診療所を受診することの大切さ」が明確となり、皆さんへの適正な医療提供につながりますので、ぜひ最後までお読みください。

1.診療所と病院の大まかな違い

1-1.定義

▶診療所
患者を入院させることができる病床数が19床(19人)以下の設備を有する施設。ちなみに入院診療を行わない診療所は「無床診療所」という呼び方もあります。

▶病院
患者を入院させることができる病床数20床(20人)以上の設備を設備を有する施設。
200床を超えると初診時の「選定療養費」を算定することができます。

つまり、199床までの病院では「選定療養費がかからない」ということです。

 

1-2.医療設備

▶診療所

  • 診療所の役割である「一次医療」を担うにあたっての医療設備が整備されており、二次医療以上に必要な検査や処置はできません。
  • 無床診療所が多く、ほぼ入院はできないところがほとんどです。

▶病院

  • 病院の規模に応じてではありますが、精密な検査や高度な処置・手術を実施できる設備が整っています。
  • 緊急時はすぐに入院し手術を行うことができます。

 

2.それでも選定療養費を払いたい方へ

ここまで診療所と病院を比較してきて、

  • 病院でできることの方が多い
  • 診療所や病院などいくつも受診するのは面倒
  • 安心を買うと思って選定療養費を払い大きな病院を受診する

と考えた方もいるのではないでしょうか。

2-1.初診時の診療内容

では、実際に診療所と病院の初診時の診療内容が果たしてどれだけ違うのか考えていきましょう。

例)腹痛で受診したケース
▶診療所
問診・診察・エコー(必要に応じて)・診断・薬処方(必要に応じて)

▶病院
問診・診察・エコー(必要に応じて)・診断・薬処方(必要に応じて)

あれ?同じ結果ですね。なぜでしょう?

2-2.日本の保険診療の原則

そもそも日本の保険制度下における保険診療というのは、患者さんの希望通りに実施されるのではなく、「医師が診察した上で必要と認めた場合」のみ、必要な検査や処方を実施するという原則があります。

ですので、患者さんが希望したからといって、その通りに検査や処方などの医療行為が提供されるとは限りません。

そんなことをすれば、診療費(診療報酬)の審査でひっかかってしまい、減点されたり削られたりして丸々医療機関側が損をする可能性がありますし、最悪のケースでは、保険医療機関や保険医としての認定を取り下げられてしまいます。

医師が患者さんを診察をし、より精密な検査が必要と判断した場合のみその検査が行われ、検査結果に応じて治療が施されていくのです。

2-3.「様子をみる」という考え方

もし仮に、患者さんの希望する検査を行えるとして、あなたは病院だからといって採血やエコー、レントゲン、CT、MRIなどフルセットで検査を実施してもらいますか?

とりあえず採血だけなど簡単な検査を受けて薬を処方してもらい、しばらく様子をみるのが一般的でしょう。

それだと診療所と同じですよね。

例えば、自動車が不調になった時、いきなりエンジンを下ろして大掛かりな点検や作業をしてもらう人は少ないでしょう。

・原因を完全に追究すべく徹底的に調べてもらう

まずは簡単な点検をしてもらったり、バッテリーを充電してみたりして、原因を少しずつ追求していくことがセオリーですね

・少しの検査で様子を見る

なぜなら、お金がたくさんかかるからです。

医療を受けることもまたそれと同じで、初期の段階でいきなり大金をかけることは避けるべきです。

それに人間は機械と違い、自己治癒能力が備わっているので、「様子を見る」「時間を置く」ということさえも治療の一環となります。

不安はわかりますが、焦って医療行為を投与しても意味がありませんので、医師の判断に委ねながら落ち着いて症状と向き合うことが大切です。

 

3.まとめ

以上、ここまでの内容をまとめますと、

  • 1.診療所と病院にはできることに差がある
  • 2.しかし初期の診察ではそれほど差はない
  • 3.保険診療の制度上仕方のないことである
  • 4.はじめから大金を投与するには躊躇する
  • 5.様子をみて時間を活用して治療に努める

となります。

以上を踏まえて、これをお読みになった方が「ちょっとしたケガや病気の受診はまず診療所から」を実践してもらえれば幸いです。

もちろん、

これはやばいぞ!いつもの腹痛とは違う!

というような緊急事態だとご自身が判断すれば、最初から大きな病院に行くことや、救急車を呼ぶことも大切です。

ご自身のお身体と医療制度を理解して、賢く受診していきましょう。

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