診療報酬請求事務能力認定試験(歯科)について【教材準備から受験まで】

診療報酬請求事務能力認定試験 医療事務

医療事務の資格の中でも最高位である診療報酬請求事務能力認定試験

無数にある医療事務の資格の中でも最も知名度があり、かつ最も難易度が高い資格であることで知られています。通称「レセ認」と呼ばれています。

ですが有名なのは「(医科)」の方であり、「(歯科)」は受験者が少ないため過去問題集さえも出版されていない状況です。

(歯科)」を受験しようと考えても、情報の少なさに戸惑って諦めてしまった方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、診療報酬請求事務能力認定試験(歯科)の第51回試験(2019年12月15日実施)を受験し、合格した筆者の経験を余すことなくお伝えしていきます。

他に無いほどのボリュームとなっており、診療報酬請求事務能力認定試験(歯科)の全てを詰め込みました。

1人でも多くの方に(歯科)に挑戦し、合格してもらいたいと考えますので、少しでも気になる方はぜひ最後までお読みください。

1.試験の概要

1-1.実施団体

診療報酬請求事務能力認定試験は、「公益財団法人 日本医療保険事務協会」主催の試験で、医療費(診療報酬)の請求業務に関するものであり医療事務系の中でもトップクラスの難易度を誇る資格検定です。

これを知らない医療事務員はモグリだといっても過言ではありません(笑)。

ですが資格がなくてもその職につけるのが医療事務ですので、医療事務員であっても持っていない人は多いです。

1-2.医科と歯科

診療報酬請求事務能力認定試験にはそれぞれ(医科)と(歯科)が存在します。

まず(歯科)というのは、歯医者さんで行われる歯科治療の範囲を指します。

一方(医科)というのは、歯科以外の内科や外科、整形外科などの診療科全てを指します。

「医師」と「歯科医師」は別物であり、歯科医師が歯に対して行う治療を診療報酬の「(歯科)」の分野で計算し請求します。

※余談ですが、歯科医師のことを「医師になれない落ちこぼれ」と揶揄する人がいますが、歯科医師になることさえも大変難しく、困難な国家試験に合格してるのですから、決して馬鹿にすべき対象ではありません。

現職の業務上、歯科のレセプトに携わることが多かったため、少しでも知識をつけようと考えたことが受験のきっかけです。

1-3.歯科に関する情報

(医科)の方は受験者数が大変多いため、たくさんの教材が出版されていたり、民間の養成講座が開かれています。

しかし、(歯科)は受験者が少なく試験に関する教材が一冊も出版されていませんでした。

参考:第50回(2019年7月15日実施)
・(医科)1,374/3,947名(34.8%)
・(歯科)23/58名(39.7%)
※合格者数/受験者数(合格率)
公益財団法人 日本医療保険事務協会ホームページより抜粋

さらにインターネットで調べても情報がほとんどないため、過去問の取得さえも困難を極める状況でした。

しかし、その少ないネットの情報を手繰り寄せ、なんとか少しずつ手順を進めていくことができました。

1-4.出願の方法

出願方法はこれは(歯科)も(医科)と同じです。

公益財団法人 日本医療保険事務協会 試験概要

こちらに丁寧な案内が載っていますが、そこからネット申し込み、もしくは郵送で願書を取り寄せてのペーパーでの申し込みの二通りの方法で出願することができます。

レセ認

図のように、ネット申込の方が手順が少なく楽ですが、期限がペーパー出願より早く締め切られます。

記載項目に特に難しいところはありませんが、(医科)と(歯科)のどちらを受験するかを選択する欄がありますので、間違えないようにしてください。

また、医科か歯科はどちらか一方のみで、二つを同時に受験することはできません。

受験料は(医科)(歯科)共通で税込み9,000円です。大変高額ですので、一発で受からないとお金も時間も無駄になります。

1-5.試験本番の概要

1-5-1.試験会場

試験地は
札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、東京都、横浜市、新潟市、金沢市、静岡市、名古屋市、大阪府、岡山市、広島市、高松市、福岡市、熊本市、那覇市

以上に限られているため、会場まで遠い方は交通機関や宿泊先の予約も忘れずとるようにしてください。

基本的には上記都市にあるどこかの大学が試験会場となります。

1-5-2.試験本番の形式

試験時間は3時間。
試験は3つの症例をレセプトに書き起こしていく「実技」と、5択の文章問題20問の「学科」からなります。

(医科)の実技は外来1件、入院1件の計2件ですが、歯科は外来3件という点で違いがあります。

実技と学科の両方で3時間の試験時間ですので、どちらからでも始めることができます。

1-5-2.試験本番の持込

試験本番は、スマートフォンなどIC端末以外であれば、教科書や自筆のノート、そして電卓と、概ね何でも持ち込むことが可能です。

本番は時間との戦いですので、教科書やノートとどれだけ慣れ親しみ、ハイスピードで正解にたどり着けるかが重要となってきます。

持ち込み可能だからと言って安易に考えていれば、太刀打ちできないほどの難易度であることは重ねてお伝えしておきます。

 

2.教材の入手方法

2-1.教科書の選定

問題は教材の入手方法です。

はじめに書いた通り、(歯科)は受験者数が少ないため教材が一冊も存在しません。

ただ、診療報酬請求事務能力認定試験(歯科)用の教材はありませんが、歯科の診療報酬を学ぶ教材はいくつかありますので、それを用います。

私がお世話になった教材をこちらです。

こちらの歯科点数表は業務では欠かせないものですが、試験では特に「学科」を解答する上では必須の一冊です。

この教材は歯科レセプトの基本が余すことなく記載されていることはもちろん、事例もたくさんあるため、実践的な勉強ができます。

教科書的な位置づけとなる教材はこれ2冊で大丈夫です。

2-2.過去問の入手方法

そして資格検定の勉強に一番大切なものは「過去問」です。

敵を知らずしては戦い方を見出すことはできません。

試験の合格への最大の近道は過去問から試験の傾向を掴むことです。

そのため過去5回分くらいは問題が欲しいところですが、これが一般的には販売されていないのです。

ネットでも探しましたが、「完全に無い」と言っても過言ではありません。

2-2-1.社会保険旬報

唯一過去問が載ってある書籍が「社会保険研究所」が発行する『社会保険旬報』です。

医療機関では職場で定期購読しているケースも多いと思います。

これの試験後の号に過去問が載っているのです。

ただ、これもバックナンバーを購入する手段が無いような状況です。

職場にバックナンバーが全て揃っていればいいのですが、そうはいかない人が多いでしょう。私もそうでした。

2-2-2.国立国会図書館

どんな状況でもそれなりの手段があります。
国立国会図書館」があります。

この図書館には、日本で刊行された全ての雑誌・書籍が格納されているようで、お手軽価格で該当ページのコピーを依頼することができます。

近い人は直接行けますが、そうでない人がほとんどのため、ホームページからコピー依頼をかけることができます。

 

3.国立図書館からの取り寄せ方法

最初にIDを作成する必要がありますが、一般的なウェブサイトと同じような手順ですので今回は省略します。

ID作成後、まずトップページの検索タブに 「診療報酬請求事務能力認定試験 第〇回」と入力してください。

画像では「第50回」で検索をかけています。



検索結果が表示されます。歯科の「学科」と「実技」を選択してください。



内容に誤りがないがないかを確認して「遠隔複写」を選択してください。



あとは申込カートに入れ、発送依頼をかけるだけで終了です。



Amazonでモノを購入するのと大差ありませんし、ページ数なども細かく指定する必要がないため、比較的簡単に注文できました。

数日で手元に届き、後程コンビニなどで複写代を支払います。

ここまでの作業でようやく過去問を入手することができました。

 

4.試験合格へのキーポイント

教科書と過去問が手に入ったため、あとはひたすら例題や過去問を反復して取り組むだけです。

そうはいったものの、なかなかモチベーションが上がらない方もいらっしゃるでしょうから、やる気が出るよう合格へのキーポイントをお伝えしていきます。

まず(歯科)は(医科)より簡単である

ということを頭に叩き込んでください。その上で一つずつキーポイントをみていきましょう。

4-1.(歯科)の範囲は「歯」だけ

(歯科)は(医科)のようにあらゆる診療科がなく、本当に(歯科)だけです。

内科や外科や整形外科など、多種多彩な診療科がある(医科)と比較してその試験範囲は雲泥の差です。

確かに、(歯科)では口腔がんや口唇口蓋裂、顎関節症などの口腔に関する疾患も診療科としては治療範囲に含まれますが、診療報酬請求事務能力認定試験の(歯科)の範囲は「歯」だけなのです。

そして、試験範囲の疾患もまた、

  • う歯(虫歯)の処置
  • 歯周炎および歯髄炎
  • 義歯(義肢不適合)
  • ブリッジ製作

ほぼこれだけです。

過去問6回分を行った範囲では、これらのに関する疾患だけが出題され、口腔がんや顎関節症は一度も出題されていません。

矯正やインプラントは保険診療ではなく自費のため、ほぼ100%試験には出ないでしょう。
※次回の試験で全く初見の問題が出る可能性ももちろんありますが・・

以上のように、(歯科)は(医科)と比べ、非常に範囲が狭いのです。

4-2.実技の出題は外来が3件で入院がない

(歯科)に入院はありません。

なぜなら、歯科での入院は、実際の診療報酬請求においても医科の診療報酬点数表で計算するからです。

もちろん、歯学部附属の大学病院などでは歯科として患者を入院させ、口腔がんや口唇口蓋裂の治療を行っています。

それらは「歯科」での入院ですが、「医科」の診療報酬に準じて計算されるのです。

つまり「歯科」で入院費を算定するという概念自体がないのです。

これらのことから、診療報酬請求事務能力認定試験の(歯科)では入院レセプトの出題がなく、代わりに外来レセプトを3件出題されることになります。

(医科)でも入院がネックになっている人が多いでしょうから、その点からも入院が無いというのは大いに気が楽になります。

4-3.レセプトは手書きだが点数がほぼ固定である

レセプトの中身に関して、下の画像をご覧ください。

これは歯科レセプトの一部ですが、各項目ごとに点数が記載されているのがわかります。

基本的には、歯科医療行為のほとんどが既に記載されている点数のどれかに当てはまるため、それを選択するだけでいいのです。

一部の医療行為のみ、該当箇所の摘要欄に記載する必要がありますが、それも定義が定まっているため、さほど苦労はしません。

さすがに試験の答案には点数は記載されていませんが、診療報酬請求事務能力認定試験はなんでも持ち込みOKですので、点数が記載されている用紙を持ち込めば事足ります。

(医科)のレセプトのように、全ての医療行為と点数を手書きしていくことを考えれば、だいぶ簡単に感じるはずです。

 

5.勉強方法

※後日更新予定

5-1.学科は「方法」を覚えるだけ

5-2.実技に時間を割いて注力する

 

6.おわりに

以上、診療報酬請求事務能力認定試験(歯科)について概要から勉強方法までお伝えしてきました。

(歯科)は(医科)と比べてだいぶ取り組みやすいことがおわかりいただけたかと存じます。

実際の現場では、手書きのレセプトなど皆無に等しい状況ではありますが、診療報酬請求事務能力認定試験は医療事務の資格としてまだまだ価値があります。

難しい試験ということはそれに見合っただけのリターンがあります。

「簡単だからとりあえず・・」と知名度の低いマイナーな医療事務資格を取るのではなく、この診療報酬請求事務能力認定試験一択でがんばっていきましょう。

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