協会けんぽの資格証明書は保険証代わりにならない?【事業所発行は無効】

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就職や転職などで新しい会社に入職したての頃は、その会社の保険証が手元に届くまで多少時間がかかります。

ですが保険証がまだ手元に届いていないにも関わらず、医療機関に受診しないといけない状況になることもあるでしょう。

会社などの職場(以下:事業所)に相談すると、協会けんぽに加入しているため、健康保険の資格があることを示す「健康保険被保険者資格証明書(以下:資格証明書」を発行してくれるところもありますが、

事業所が発行する資格証明書は保険証の代わりにはなりません。

事業所が発行する資格証明書は、処理の途中段階のものであり、正確な内容とは言えません。

保険証が完成する前に医療機関を受診するのであれば、「年金事務所」が発行する「資格証明書」が必要です。

事業所が発行する資格証明書が保険証の代わりとならない理由や、その他保険の「資格証明書」について詳しく説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。

1.協会けんぽの健康保険

協会けんぽは、会社独自で健康保険組合を設立できないような中小規模の事業所のために健康保険の運営を組織しています。

平成20年10月に「全国健康保険協会」が設立され、従来政府が行っていた「政府管掌健康保険」が「協会けんぽ」として生まれかわり、全国健康保険協会によって運営されることとなりました。

これに伴い、健康保険の給付の手続や相談等は、協会の各都道府県支部で行い、健康保険の加入や保険料の納付の手続は、日本年金機構(年金事務所)で行っています。

 

2.健康保険証発行の手続き

協会けんぽに加入する事業所に入職した際、健康保険証は以下の手続きに沿って発行されます。

協会けんぽ 資格証明書

  1. 健康保険の資格取得届を年金事務所へ提出
  2. 届出の審査・確認完了後、協会けんぽへデータ転送
  3. 保険証を作成し事業所へ送付
  4. 従業員やその家族へ保険証を渡す

これだけの手続きを踏む必要あるため、保険証が手元に届くにはどうしても手続き開始から(入職してから)10日~2週間以上の時間がかかってしまいます。

そのため、「保険証がまだ手元に届いていないが医療機関を受診したい」と従業員から言われれば、事業所は手続き中の保険証番号で資格証明書を発行してくれるのです。

これが事業所発行の資格証明書です。

 

3.事業所発行の資格証明書

では、なぜ事業所発行の資格証明書では保険証の代わりとならないのでしょうか?

事業所が発番した保険証番号が、後ほど正式に発行された保険証とは異なる可能性があるからです。

事業所としては保険証番号を通し番号で管理しているからこれで大丈夫!と考えていますが、年金事務所を経由することによって異なってしまう可能性あるのです。
(どのような仕組みで保険証番号が変わるかは不明です)

 

4.年金事務所発行の資格証明書

事業所発行の資格証明書はまだ保険証番号が変更される可能性があるため、保険証の代わりとはなりませんが、年金事務所での手続きが済めば、年金事務所から資格証明書を発行してもらうことができます。

年金事務所が発行する資格証明書は医療機関でも保険証の代わりとして扱うことができます。

ですので、一刻も早く医療機関を受診したい場合は、管轄の年金事務所で資格証明書を発行してもらうよう申請してください。

年金事務所側の手続きさえ済んでいれば、申請したその場で資格証明書を交付してもらうことができます。
(申請には事業主の証明が必要になる欄があり、かつ、自分で年金事務所に申請に行く場合は事業主の委任状が必要とのことです)

 

5.資格証明書が間に合わない場合

保険証はもちろん資格証明書さえも手元に無い段階で、症状により救急で医療機関の受診が必要になった場合はどうしましょう?

医療機関の窓口で医療費全額をいったん支払ってしまいましょう。


医療機関の窓口でいったん10割で支払ったとしても、後日協会けんぽに保険負担分を請求することができます。

たとえば3割負担の方であれば、協会けんぽに請求することで残りの7割分が返金されるのです。

一度10割全額を支払う必要がありますので、少し重荷に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、クレジットカードなどで支払えばポイントがつきますのでお得です。

 

6.他保険の資格証明書

6-1.国民健康保険の資格証明書

国民健康保険の資格証明書はまた意味合いが異なります。

国民健康保険の資格証明書は、保険料を滞納している方に対して発行されるものです。

  • 保険料の滞納期間が6カ月以上1年未満の場合は「短期被保険者証」が交付される
  • 保険料の滞納期間が1年以上1年6カ月未満の場合は「被保険者資格証明書」が交付される

(どちらも市町村や滞納状況によって異なる)

資格証明書をお持ちの方は、保険料を滞納しているため健康保険が適応されず、医療機関の窓口では10割全額を支払う必要があります。

滞納している保険料を支払えば、後日市町村より自己負担分を引いた額が払い戻されます。
(3割負担の方であれば、7割が返ってくる)

ちなみに、国保の保険証は基本的に申請した当日に発行されるため、協会けんぽのような「資格がある証明をするための資格証明書」はありません。

  

6-2.健康保険組合の資格証明書

健康保険組合とは、会社自体が設立する公法人をいいます。

大企業など一つの企業で独立した健康保険組合を設立しているケースや、複数の会社が共同して健康保険組合を設立するケースなどがあります。

健康保険組合の場合は、協会けんぽが年金事務所を経由するようなことはなく、自分たちの組織内で完結させることができるため、事業所もしくは組合が発行する資格証明書でも保険証の代わりとして扱うことができます。

ただ、いくつかの健康保険組合のホームページを見ると

「保険証が手元に届いていない時に医療機関を受診する場合は、一旦10割で立て替えおき、後日還付の手続きをするように」

と定めているケースが多いです。

 

7.本記事のまとめ

  • 協会けんぽの健康保険は年金事務所が関わる
  • 事業所が発行する資格証明書は保険証の代わりにならない
  • 年金事務所が発行する資格証明書は保険証の代わりになる
  • 保険証や資格証明書がなく受診するなら10割で払えばよい
  • 国保や組合では資格証明書の意味合いや効果が変わってくる

 

8.おわりに

以上、協会けんぽの資格証明書についてお伝えしてきました。

医療機関に勤める人間としては、事業所発行の資格証明書を持って来られる患者さんが大変多く困っている次第です。

「会社が発行したものだから使えないわけがない」と患者さんは思い込んでいるため、保険証の代わりにならないと伝えてもクレームになってしまいます。

この記事をより多くの方に読んでいいただき、資格証明書についてご理解を深めていただけましたら幸いです。

参考ページ:全国健康保険協会など

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