診療所や病院などの医療機関を縁の下で支える医療事務ですが、給料が安かったり、その割に大変な仕事だったりというイメージを持っている方も多いでしょう。
実際、「医療事務として働く」ということは底辺できつい仕事なのでしょうか。
この記事では15年以上にわたり医療事務という仕事に向き合ってきてた筆者が、病院における医療事務の「リアル」についてお話していきます。
この記事はこんな人におすすめです
- 将来は医療事務を目指そうか考えている高校生
- 医療事務への転職を考えている人
- 現在医療事務として勤めていて不安を感じている人
医師や看護師にこき使われて、患者さんには窓口でクレームを言われてと、大変なイメージのある医療事務ですが、果たして本当に底辺の仕事なのでしょうか?
結論としては
決して底辺な仕事ではない
これが私が15年以上働いてきて素直に感じる感覚です。
一つずつ説明していきますので、一緒に疑問を払拭していきましょう。
目次
1.給料面
1-1.基本給は低い
まず給料面ですが、正直なところ病院の中ではどの職種と比較しても基本給は「一番低い」と言えるでしょう。
他の資格が医師や看護師をはじめとする国家資格所持者ですから、やはりその差は給料に現れます。
ですが、医師や看護師、また薬剤師は別格として、その他の国家資格者とは給料面にそれ程差があるとは言えません。
病院には理学療法士や作業療法士、診療放射線技師や臨床検査技師など、たくさんの国家資格を持つ職種が存在しますが、それらと比較して極端に少ないということはなく、せいぜい1~2万円程度の差です。
1-2.夜間当直による手当
私が新卒に就職した病院は救急病院だったため、医療事務員も夜間当直の業務がありましたが、当直があるからこそ、これが結構良い給料になりました。
当時は月に6回ほど当直に入っていたため、同期のどの職種よりも多い給料をもらえていました。
ただ、夜間の当直は危険が伴うため、配属されるのは男性のみです。
1-3.レセプト業務による残業手当
また、医療事務員には切っても切れないのが「レセプト業務」です。レセプト業務がある以上、大抵の病院では月初めの1日から10日までは残業が必須です。
このレセプト業務にかかる残業手当もまた、医療事務員の給料を多くさせる要因です。
残業は大変ですが、ブラックな病院でなければ残業代はしっかり出ます。
残業をしないで遊んでしまい、逆にお金を消費してしまうよりも、若いうちにしっかりと働いて手取り額を増やし、貯金や投資に回しておくことがベターであることを考慮すると、残業によって手取り額が多くなることがそれほどデメリットであるとは言えないでしょう。
2.病院内での立ち位置
2-1.前提条件
そのため、そんな人がいればどんな職種であろうとも相手をする必要はないでしょう。
基本的に人間ができている人は職種で人を判断しません。
医療事務員が真剣に業務を行っていれば、たとえ名だたる名医の医師であっても、医療事務員の話をないがしろにすることなく真剣に取り合ってくれます。
2-2.組織内の位置づけ
とはいえ、やはり上述のように「医療事務員は無資格者」という色眼鏡で見る人は多いのが実状です。
しかし、組織図などをみればもちろん医療事務員が他職種より低い立場であるということはありません。
医療事務員の第一の上司は所属する課の課長であり、看護師やその他職種ではないため、指示命令系統は異なります。
無条件に他職種の命令を聞く必要は全くありません。
また医療事務員が他職種の仕事をできないのと同じく、他職種の人たちもまた、医療事務員の仕事を同レベルで実行することはできないのです。
自分たちの専門性にプライドを持ちながら、他職種と対等の意識を持って接していきましょう。
※ちなみに医師は別格で、全ての壁をぶち破って医師の言うことは絶対!みたいな風習が病院にはあります(苦笑)。
3.医療事務に求められる能力
医療事務員にはあらゆる知識とスキルが求められます。
簡単に挙げてみると
- 診療報酬全般に関する知識
- 医療行為全般に関する知識
- 医療制度などの法律に関する知識
- その他、病院運営に欠かせない知識
- 電子カルテなどコンピュータのスキル
- 患者や職員とのコミュニケーションスキル などなど
このように、これらの内容は大変多岐にわたり、国家資格が無いのが不思議なほど、求められる能力は広く深くあります。
決して誰にもできる仕事ではありません。
4.キャリアパスのモデルケース
医療事務員のキャリアパスとして、最終的に病院の「事務長」を目指すということが挙げられます。
医療事務員として患者対応窓口業務やレセプト業務などを一通り経験したのち、総務課で経理や人事、施設管理等について学ぶことで、将来の事務長候補として成長していくのです。
事務長のポストは、事務職員でなくてもなれるため、薬局長やその他職種の室長や技師長などの人も候補に挙げられます。
しかし、今まで事務の中で病院全体の業務に関わりながら仕事をしてきた事務員の方が事務長になるケースが多いです。
その他職種の長と比較し、事務員は病院運営に係る業務に早くから携わっており、経験値が豊富です。
さらには少ない例ではありますが、事務員から「副院長」にまでのし上がった方もいらっしゃいます。
初めは他職種と比較して給料が少ないかもしれませんが、将来的に事務長のポジションに一番近いのが医療事務員です。
5.医療事務はブラックではないのか
医療事務員がブラックかというよりは、その病院がブラックかどうかが重要です。
その病院がホワイトであれば、医療事務員もその他の職種も全てホワイトですし、その病院がブラックであれば、医療事務員もその他の職種も全てブラックです。
上記の1-2項のように、「レセプト業務による残業がある」ということが単純に「イコールブラックである」とは言えません。
レセプト業務などその他残業の残業代がしっかり出るならばホワイトですし、出ない・または削られるならばブラック、ということです。
6.医療事務になろうと考えている人へ
医療事務という仕事に魅力を感じ、働こうかと考えている人にはぜひ資格を取っておいてもらいたいです。
医療事務には国家資格はないにせよ、
- 診療報酬請求事務能力認定試験
- 医師事務作業補助者
- 診療情報管理士
- 医療情報技師
といった名だたる資格が存在します。
それらの資格を勉強して取得することで、医療事務としての専門性がより磨かれていき、ご自身の自信にも大きく貢献します。
決して無駄な資格ではないので、他の国家資格保持者と同様、一生懸命勉強してください。
7.医療事務は決して底辺な仕事ではない
本記事のまとめです。
- 医療事務の基本給は他職種と比較して少ないが、当直や残業により手取りは多い。
- 医療事務員を下に見る人は一定数いるが、まともな人はそんなことはしない。
- 医療事務員の業務は大変多岐に渡り、高度な専門性を有する。
- 最終的には他職種よりも事務長や副院長のポストにつける可能性が高い。
- ブラックかどうかは病院(組織)によるものであり、職種ごとに判断できない
8.おわりに
以上、医療事務は決して底辺ではないと考える理論を展開してきました。
他職種と比較した例も出しましたが、一概にも全ての病院、全ての職種間において本記事のようなことが言えるのかといえばそうではなく、たとえば
「空手と柔道はどちらが強いか?」
といった問いのように、「空手だから」「柔道だから」とは言えず、あくまで「個人としてその力量がどうか」ということが本質です。
記事に上げた国家資格保持者の方でご気分を害された方がいらっしゃいましたら、大変申し訳ございません。
また、本記事は10年以上医療事務業界に携わっている私が、多くの見聞きした現場の実情を踏まえての個人的な意見です。
全ての病院にあてはまる内容ではありませんので、重ねてご了承ください。
1人でも多くの医療事務員の方が、その仕事に誇りをもってより高みを目指していくであろうことを切に願います。
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