「医療事務」と聞けば、女性をイメージされる方が多いことでしょう。
ですが、医療事務として就職したいと考えるのは女性だけでなく男性もいます。
果たして、医療事務において男性に需要や役割はあるのでしょうか。
実際、医療事務としての男性向けの求人はたくさんあります。
この記事では、15年以上医療事務やその医療事務系教育機関に携わり、学生の就職支援業務も行っていた筆者が、医療事務における男性の需要や役割についてひも解いていきます。
最後までお読みいただくことで、男性が前向きに医療事務を目指せるようなモチベーションとなる内容になっています。
ぜひ、女性だけでなく男性の方も積極的に医療事務を目指していただけると光栄です。
「医療事務」といえば、病院の受付にいる女性をイメージする方が大半でしょうが、実際には筆者のような男性も多数在籍しています。
では、実際に男性の医療事務に需要はあるのか、あるのであればどのような医療機関に所属し、どのような業務を担っているのでしょうか。
これらの疑問に基づいて各項目ごとに順を追って説明していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.男性の医療事務の需要と役割
まず本記事の本質ともいえる内容からですが、男性の医療事務としての需要は、
女性よりも多い
というのが筆者の印象です。
患者さんの中には身体が不自由な人がいて、病院の受付にいる医療事務職員が補助することもありますし、モンスターペイシェントという、いわゆるクレーマーの対応も求められます。
それらの他にも男性が必要な場面は多々ありますが、最も男性が求められる理由を根拠を踏まえて説明していきます。
1-1.夜間当直
筆者が過去に勤めていた医療機関では、24時間365日救急患者を受け入れていたため、夜間当直(いわゆる夜勤)の担当が毎日2名必要でした。
17時~翌朝9時の勤務で、夜間から深夜、そして早朝にかけての事務担当者として、その時間帯に救急で来た患者さんの診療費の計算や金銭授受、電話連絡などを行うのです。
そしてその夜間当直が、「男性」のみで回していたのです。
これは筆者の勤めていたその病院だけの話ではなく、24時間救急診療を行う病院であれば、大半がこのような体制を取っています。
1-1-1.夜間の患者対応
なぜ、男性だけで夜間当直を回すのかといえば、夜間の患者対応は危険が伴うからです。
ただでさえ、夜中で人が少なく、電灯も消して暗い閑散とした病院に来院してくる患者さんは、
- ケンカ
- 酔っ払い
- 交通事故
- 薬物中毒
といったような、「危険な」患者さんが多く来院します。
怒号は当たり前で、時には職員が暴力を振るわれることもありました。
そんな状況ですから、夜間に不特定多数の患者さんの対応をしなければならないポジションに、女性を出すわけにはいかないのです。
1-1-2.救急車の運転と患者搬送
また夜間当直業務の一つに、「医療事務員が病院の救急車を運転し、別の病院に患者さんを迎えにいく」という業務もありました。
普通免許で運転できる最大の大きさであろう救急車を、サイレンを鳴らしながら運転するのです。
市の救急車は、市の救急隊が運転していますが、病院の救急車は事務員などが運転します。
それには特別な免許は不要であり、自動車の普通免許さえ持っていればサイレンも鳴らして運転することができます。
もちろん、救急の患者さんを病院まで搬送する(迎えに行く)時だけですが。
また、救急車の運転に付随して「患者さんをストレッチャーに載せて救急車内に収容する」ということも必要ですが、それにはかなりの力を必要とします。
そのような業務内容からも、女性の夜間当直はなく男性のみで当直担当を回すのです。
1-1-3.各病院からの求人募集の内容
これらの夜間当直の事情を踏まえて、現に筆者が医療事務の教育機関に勤めていた時は、病院から男性の新卒者を希望する声を多々受けていました。
「男性は当直に入ってもらえるから男性を紹介してほしい」
つまり、女性は夜間当直に入れることができないため、男性を欲するということです。
もちろん、公けの求人募集で「男性のみ募集」といったような性別限定の募集はできないため、あくまで学校と病院の縁故の関係でのみ行われるやりとりです。
2.管理職候補
将来の課長や事務部長などの管理職候補として男性を医療事務職員として雇用することがあります。
女性だから管理職になれない、というわけではもちろんありません。
男性には、結婚・出産・子育てのライフスタイルの変化を受けにくく、女性と比較して長期勤続する傾向にあるため、男性職員を登用し、将来の管理職候補としてキャリア形成を図るということです。
そのため、はじめは医療事務としての求人に応募し採用されたが、経験を重ねることに総務課や経理課など他部署に異動するといったこともあるでしょう。
管理職候補として、医療事務だけではなく、病院全体の経営に関わるような様々な部署を経験し、立派な管理職になる。
そのようなビジョンで養成される傾向にあります。
2.男性職員を求める医療機関の性質
医療機関には診療所から大病院まで様々な規模や性質の施設がありますが、男性職員はどのような医療機関で需要が高いでしょうか。
2-1.診療所、クリニックなど
診療所など小規模な医療機関では女性がほとんどであり、24時間診療は行っていませんし、医師である院長先生がいるため、わざわざ管理職として「事務長」などのポジションに男性を配置する必要もないでしょう。
そのため、診療所において男性の医療事務員の需要はほんのわずかでしょう。
2-2.中規模病院
24時間診療を行い一般的な救急診療を行う中規模の病院では、夜間当直の人員が必要となりますので、たくさんの男性翌員が必要になります。
そのため、男性が医療事務として就職するには一番のねらい目であるゾーンです。
「中規模」と言う表現がなかなかわかりにくいですが、病床数で言えば100~300床くらいで、おそらく皆さんが一番目にするであろう近所の病院がそのような規模であると理解してもらって結構です。
2-3.大規模病院
医療センターや大学病院などの大規模な病院では、受付や会計、また夜間当直などのポジションに「正社員」ではなく「派遣社員」を充当しているケースが多くみられます。
そうなれば必然的に医療事務の正社員としての枠は少なくなりますので、大規模病院での医療事務としての就職は狭き門となっていきます。
では医療事務を目指す男性が派遣社員になるという選択肢はどうでしょうか?
3.男性が派遣職員として医療事務になることは
医療事務系の派遣業者は「ニチイ」や「ソラスト」などがあり、大学病院など大規模な病院には多くの職員が派遣されています。
ですが、それら派遣会社に所属し病院に派遣されている職員はほとんどが女性です。
男性の派遣職員というのは本当に稀です。
古い考えではありますが、男性は一家を支えるためにも正社員として働くという文化が根付いているということでしょう。
男性もニチイやソラストに希望すれば入職できるでしょうが、給与等の労働条件を踏まえると派遣社員として働くよりは、より条件のいい病院での正社員を狙うことがベターです。
女性にとっては、結婚・出産・子育てなどのライフスタイルの変化に合わせて柔軟な働き方ができる派遣社員は大変魅力的だと考えます。
4.男性が医療事務として病院に就職するメリット
筆者が医療事務で病院に就職してから感じたメリットは、
「女性にモテた」
ということが一番に挙げられます。
筆者が過去に所属していた病院は職員数500人程度に対し、350:150で女性の方が多かったのです。
看護師さんはほとんどが女性ですし、他の医療スタッフも女性が多いです。
そんな男女比ですから「女子高の中の男子」のような希少種として、そのポテンシャル以上にモテるのです。
職場内にはたくさんのカップルがおり、結婚した人たちも多数いましたので、そのような風土が醸成されていたこともありがたかった点です。
他の医療スタッフの男性陣は大多数が白衣を着ているのに対し、ネクタイとスーツを着た事務員は少数派であり、魅力的に見えるという意見をいただいたこともあります。
これだけでも男性が病院に就職する価値は大いにあるといえるでしょう。
冗談みたいな本当の話でした。
5.おわりに
女性職のイメージのある医療事務でしたが、こうしてみると男性も大いに活躍していることがわかってもらえたかと思います。
筆者自身、15年以上医療事務関連業務に携わっていますが、やりがいがありますし転職もしやすいですし、とても働きやすい仕事だと実感しています。
もっと多くの男性に医療事務を目指していただき、病院経営に携わってもらいたいという考えから、役に立つ情報を発信していくよう努力していきます。