「医療費は高額療養費制度のおかげで自己負担額が抑えられるから安心」
とはいえ、入院や手術を実施した場合ではたとえ3割負担であったとしても、100万円程度かかることも頻繁にあります。
高額療養費制度が適用されて還付請求をすることで、医療費の差額分が後から返ってくるとはいえ、一旦はその100万円もの医療費を医療機関に支払うことはなかなか難しいです。
でも安心してください。
事前に「限度額適用認定証」を申請し医療機関の窓口に提示することで、窓口負担金が高額療養費の限度額に応じた分だけの請求となります。
この記事では、医療事務員として入院にかかる医療費の請求業務に携わり、多くの患者さんにアドバイスをしてきて筆者が、高額療養費制度における限度額適用認定証についてわかりやすく説明していきます。
この記事をお読みいただくことで、医療費にかかる不安がずいぶんと払拭されますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1.基本は高額療養費制度
限度額適用認定証の基本は高額療養費制度です。
高額療養費制度とは、医療費が高額になった際に患者さんの負担を軽減する大変素晴らしい制度です。
同月内(月の初めから終わりまでの1か月間)で、医療機関や調剤薬局の窓口で支払った医療費の自己負担が一定の金額を超えた場合、超えた金額が市役所(国保)や健康保険組合(社保)などから支給されます。
自営業者やフリーランサーの方が加入する国民健康保険と、公務員や会社に勤める方が加入する健康保険の両方で共通の仕組みをとっており、支給額は加入者の年齢が70歳以上かどうかや所得(月収や年収)の水準によって異なります。
詳細を以下の記事にまとめています。本記事と重複する部分も多々ありますが、ぜひご参考ください。
高額療養費制度で抑えられる医療費の限度を、還付ではなく医療機関での支払いの時点で適用させることができるのが限度額適用認定証の効力です。
2.限度額適用認定証の有無による違い
限度額適用認定証を退院日までに取得しておくかどうかで以下の図のように違いがあります。
限度額適用認定証を退院時までに取得しておけば、限度額が適用された分だけを病院に支払えばいいため、大金を準備する必要がなく、また退院後の手続き等も不要です。
一方、限度額適用認定証を取得していないと、退院時に健康保険の負担割合が3割負担であれば3割負担全てを支払う必要があるため、入院期間や手術内容によっては100万円以上もの大金を支払わなければなりません。
そしてその後、市役所や会社など加入する健康保険に高額療養費を申請することで、2~3か月後に差額のお金が返って(還付されて)きます。
所属する組織によっては、申請無しで給料と一緒に振り込まれるパターンもありますので、ご確認ください。
3.限度額適用認定証が使えないケース
以下のケースに該当する場合は限度額適用認定証が使えません。
一旦は自己負担分を支払う必要があります。
医療機関が複数に渡ったり、医療を受けた人が複数人である場合などは、
その人(その世帯)がその月にどこの病院でどれだけ支払っているか把握できないためです。
このような場合は、後から高額療養費制度をしっかり申請し、還付されるように手続きをすればOKです。
3-1.入院と外来を受診
3-2.医科と歯科を受診
3-3.病院と調剤薬局の扱い
3-4.世帯合算による家族の扱い
4.限度額適用認定証の取得方法について
限度額適用認定証を取得するには、市役所や健康保険組合などの保険者に申請することで支給を受けることができます。
国民健康保険と協会けんぽや健康保険組合で申請先が異なりますので、ご加入の保険を確認し、間違えないようにしましょう。
4-1.国民健康保険加入者
市役所の国民健康保険の窓口に行き、申請用紙を記入し提出することで概ね15~20分程度で交付してくれます。
4-2.協会けんぽ加入者
協会けんぽに加入している職場はこちらの協会けんぽ用の申請書を記載し、担当の協会けんぽ支部にて手続きをします。
ご不明な点は職場の総務課等の担当者にご確認ください。
手続きには国保と違い、1週間程度時間がかかることが多いです。
4-3.健康保険組合加入者
健康保険組合を持つ職場では、お勤め先の総務課等の担当者に支給の手続きをとることができます。
こちらも国保と違い、1週間程度時間がかかることがほとんどです。
5.年齢や所得による限度額適用認定証の例外
前項に限度額適用認定証の取得方法について記載してましたが、年齢や所得によっては限度額適用認定証が不要であったり、少し名称が違っていたりします。
以下の年齢や所得による高額療養費の上限額一覧表をもとに説明していきます。
赤印の低所得者(住民税非課税世帯)に該当する方は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」が限度額適用認定証に代わって必要です。
青印の70歳以上75歳未満の前期高齢者にあたる一般所得の方は、70歳になった時に通常の健康保険証と一緒に「高齢受給者証」が交付されますので、それさえあれば限度額適用認定証の申請は不要です。
緑印の75歳以上の後期高齢者にあたる一般所得の方は、75歳になった時に「後期高齢者医療被保険者証」が交付されるため、それ一枚さえあれば限度額適用認定証の申請は不要です。
上記の印が何もないところに該当する人は、限度額適用認定証の申請が必要になります。
たとえば、現役並み所得のある70歳以上75歳未満の前期高齢者や75歳以上の後期高齢者の方は限度額適用認定証を申請する必要があります。
それぞれ些細な違いはありますが本質的には変わりありませんので、限度額適用認定証を申請することと同様に市役所やお勤め先の担当窓口にご相談ください。
6.本記事のまとめ
- 日本の健康保険制度は世界最強である
- 高額療養費制度で自己負担が軽くなる
- 限度額適用認定証で窓口負担が抑えられる
- 限度額適用認定証が無効になる場合がある
- 国保・協会けんぽ・組合など申請方法が若干異なる
- 年齢や所得により限度額適用認定証が不要な場合もある
6.おわりに
以上、高額療養費制度における限度額適用認定証について説明してきました。
入院し手術となれば高確率で限度額を超えることになるため、迷うことなく限度額適用認定証の申請をすることをお勧めします。
手間はわずかですし、無駄になったらなったで申請できた経験が身に付きます。
病院の医療事務員の方も患者サービスと未収金対策も兼ね、限度額適用認定証の取得方法を親切丁寧に説明してくださいますので、ぜひご相談してみてください。