医療事務の仕事や資格について調べていると「医療情報技師」という資格を目にしたことはありませんか?
「医療情報技師」とはどのような資格で医療事務とはどう違うのでしょうか?
この記事では、医療情報技師についての概要や業務内容をわかりやすく説明していきます。
これから進路を考える高校生や、「専門的なことは全くわからないけど興味がある」といった方でも理解できるような内容となっておりますので、ぜひ最後までお読みください。
私自身、医療事務として働き、医療情報技師の知識の必要性を感じて資格取得に至りました。
項目を細かく分けて解説していますので、一つずつ見ていきましょう。
目次
1.医療情報技師とは
1-1.部会の定義と概要
「医療情報技師」は、「一般社団法人 日本医療情報学会 医療情報技師育成部会」(以下:部会)が認定する民間資格です。
部会によると医療情報技師は、
「保健医療福祉専門職の一員として,医療の特質をふまえ,最適な情報処理技術にもとづき, 医療情報を安全かつ有効に活用・提供することができる知識・技術および資質を有する者」と定義されています。
とても簡単に言いますと、診療所や病院、高齢者などの施設や在宅医療を担う人々の一員として 、パソコンやネットワークを利用する業務をサポートしていく人といったところです。
定義では多くの現場で活躍するような表現になっていますが、実状としては電子カルテシステムの整備された病院がメインとなってきます。
現代の医療現場では、業務の負担を軽減するため多くのシステムが導入されており、欠かせないものとなっています。それらのシステムの管理や日々のメンテナンスを行うのが医療情報技師です。
1-2.ポイント更新制度
医療情報技師の最大の特徴として、「ポイント更新制度」があります。
医療情報技師の資格は5年間の期限付きと、なかなか珍しいパターンです。
5年の期間内に手続きを踏んで更新しないと資格を消失してしまうのですが、更新条件として
- 学会や研修会などに参加し、ポイントを50ポイント以上取得する
- 「生涯研修セミナー」の受講(e-Learningも可)
これらの条件を満たす必要があります。
部会が認める学会や研修会にはそれぞれポイントが設定されており、参加することでポイントを獲得することができます。
さらに医療情報技師育成部会が実施する「生涯研修セミナー」というセミナーを受講することも必須要件となっています。
生涯研修セミナーはe-learningでも受講できますし、内容に応じてポイントも設定されていますので、特別受講が難しいものではありません。
更新制度は手間でお金もかかりますが、医療情報技師としてのレベルを常に維持向上することや業界とのつながりを強固にすることもできるため、メリットも多いです。
1-3.科目合格制度
医療情報技師の試験は以下の3科目からなります。
- 医学医療編 50問
- 医療情報システム編 60問
- 情報処理技術編 50問
それぞれの科目で概ね6割の点数を取れば合格です。
科目合格制度があり、3つの科目全てが合格ラインに達しないと取得には至りませんが、例えば1つの科目だけ合格ラインに達した場合、その科目は2年間免除されます。
つまり、3年間かけて1つの科目ずつ受験するといったことも可能といえば可能です。
1-4.医療事務との違い
医療事務とは「医療機関に勤める」という共通点以外は全く別物です。
簡単に言えば、医療事務がその業務で扱う電子カルテや会計ソフトなどを保守管理するのが医療情報技師です。
2.医療情報技師の勤務先や業務内容
医療情報技師を取得後には主に2つの職業が考えられます。
2-1.医療機関のシステム管理
医療機関に勤める医療情報技師は、医療機関で使用している電子カルテなどのシステム管理が主な業務となります。
患者さんの診療を行う上で欠かせないものなので、医療情報技師が日々滞りなく運用できるよう管理し、問題が生じた場合は即座に対応します。
電子カルテシステムは医療機関に所属するほぼ全ての職員が使用する反面、誰もシステムを理解していません。
そんな職員たちの要望を聞いてシステムを改良したり、システムの啓蒙活動をしたりと大変な部分もあります。
また、新たに追加されるシステムの導入も医療情報技師が担当します。
電子カルテシステムの製作会社とそのシステムが実装される部署の担当者と、そして医療情報技師との3者でシステム導入の設定を行い、より良いシステムを導入していくべく進めていくのです。
2-2.電子カルテベンダー
先の項で挙げた「電子カルテシステムの製作会社」が「ベンダー」です。
ベンダーの業務は、システムの開発や導入とその保守です。
医療情報技師を持ってベンダーになることで、医療への理解が進み、より現場に則したシステムの開発を行うことができるのです。
ベンダーは、開発されたシステムを病院ごとの実情にあった形にカスタマイズし、操作方法の指導や環境の構築をします。
システム導入後も、病院側のシステムエンジニアと連携し、保守を継続して行っていきます。
一般的なシステムエンジニアは、それまでの過程で医療の知識を学ぶ機会がありませんので、電子カルテシステムなど医療系システムに携わるまたは興味のあるシステムエンジニアなら、医療情報技師の取得がおすすめです。
3.医療情報技師を取得するには
3-1.受験資格
医療情報技師を受験するにあたり、資格は不要です。誰でも受験することができますので、多くの方に挑戦してもらいたいです。
ちなみに受験料は15,000円です。
3-2.勉強方法
医療情報技師の取得を目指して勉強していくには、大学や専門学校などの教育機関で学ぶか、独学で行う道があります。
教育機関に所属すると、医療情報技師だけでなく医療事務に関する分野も一緒に勉強することがほとんどのため、視野や選択肢が広がります。
また、教育機関が就職まで面倒をみてくれますので、現在高校生の方は進学のひとつの選択肢として考えるのもいいでしょう。
既にシステムなど情報処理の知識が豊富な方や、別の医療系の資格を持っている方、既に病院勤務歴がある方などは独学でも合格は可能です。
4.医療情報技師として就職するには
医療機関のシステム管理者と電子カルテベンダーは共に人出不足ですし、今後のICTの発達を考えるとこれからも求人数は増え続けるでしょう。
現状、医療機関はまだまだ電子化が十分進んでおらず、電子カルテシステムを導入していく病院も増加傾向にあります。
ですが、医療情報技師一本でどこでも就職できるかと言えばそうではありません。
システムエンジニアとしてのスキルや他の医療系資格を持っていて初めて価値が出る資格だと筆者は考えます。
現に医療情報技師を持つ人には、情報処理に長けている人や診療放射線技師や診療情報管理士など医療従事者が多いです。
5.本記事のまとめ
- 医療情報技師とは日本医療情報学会が認定する民間資格である
- 更新制度があり、取得から5年の間に50ポイントを取得する必要がある
- 試験は3科目からなり科目合格制度により合格した科目は2年間免除される
- 就職先としては、病院など医療機関や電子カルテ製作会社(ベンダー)がある
- 資格を取得するには、大学や専門学校などの教育機関の他、独学で取得する手もある
- 就職において需要はあるが、情報処理や他の医療系資格との併用でないと難しい
6.おわりに
医療情報技師についてみてきましたが、パソコンに向かってひたすらプラグラミングを行う仕事ではないことがおわかりいただけたかと思います。
医療機関で働くにしろベンダーで働くにしろ、医師や看護師、事務職員などたくさんの職員とコミュニケーションを取りながら業務を行う必要があります。
時には医学の基礎知識が必要だったり、システムの知識が不可欠だったりと、その領域は非常に多岐にわたります。
今後ますますICT化が進む社会において、医学知識に長けたシステムエンジニアである医療情報技師の活躍が期待されます。