病院に入院する際、事務員の方から「当院はDPC対象病院です」と言われ、説明されるも???となった方も多いことでしょう。
病院から渡されたパンフレットを呼んでもあまりよくわからず・・ただでさえ病気で不安なのに、医療費の不安までのしかかってきては治る病気も治りませんよね。
ご安心ください。DPCだからといって割高になるということはありません。
この記事では、医療事務員として10年以上業務に携わり、多くの入院患者さんに説明をしアドバイスを行ってきた筆者が、DPCについて一般の方向けに簡単にわかりやすく説明していきます。
DPCはとても奥が深く複雑ですが、患者さん側が知っておくべき内容だけに絞り、イラストなどを用いて説明していきます。
専門用語の使用をできるだけ控えた理解しやすい内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
1.DPCとは
DPCとは入院費の計算方法のことで、別名「包括払い方式」と呼ばれます。
「包括」とは、「全体をひっくるめてまとめること」であり、DPCとは一日の入院医療費を定額で計算する制度のことです。
従来の、点滴を打ったり薬を処方したり手術をしたりと、医療行為を実施したら実施した分だけ費用がかかる「出来高方式」と対をなす方式として、平成20年から急性期の病院(皆さんがイメージする”ザ・病院”なところ)で実施されるようになりました。
急性期の病院がDPC対象病院になるかどうかは自己申告制のため、2020年現在でもDPC対象病院とそうでない病院が存在しています。
2.出来高払いと包括払い
出来高払いと包括払いという聞きなじみのない用語が出てきましたが、臆することはありません。
飲食店に置き換えて考えてみましょう。
- 単品のアラカルト形式→出来高
- 食べ放題のバイキング形式→包括払い
こう考えるとわかりやすくなりましたね。
つまり、従来の出来高払いの入院では、医療行為を実施した分だけ医療費がかかりますが、包括払いでは医療費が定額ですので、どれだけ医療行為を実施しても医療費が極端に増えることはありません。
ただ、医療行為の全てが包括されるわけではなく、出来高のままのものもあります。以下の図をご覧ください。
このように、入院基本料・投薬・注射・レントゲン・検査・処置などはDPCでは包括され定額となりますが、手術やリハビリ、内視鏡検査等高度な検査などは出来高で計算されるのです。
手術などそれらの医療行為はさすがに高額ですので、包括に含まれてしまっては大赤字になるため、特別に出来高で計算することになっています。
飲食店のバイキングで例えると、定額料金で食べられる料理とは別に、費用がかかる良質なステーキやお寿司などがDPCでの手術やリハビリなどの医療行為にあたるといえるでしょう。
3.病名により医療費が決定
DPCでは入院の医療費が定額といいましたが、その額は何を基準として決まっていくのでしょうか?
それは患者さんが診断された病名によって一日の医療費の定額が決まるのです。
たとえば、一般的に「盲腸」と呼ばれ、軽めの病気というイメージがある急性虫垂炎での入院なら一日31,090円と定められていますが、重い病気である脳出血なら42,010円と、急性虫垂炎と比較して割高になっています。
※金額は実数値に基づいていますが、あくまで目安とした一例です。
このように、病気が重症であればその分医療行為を行う(医療資源を投与する)必要があるため、一日の医療費の定額が高めに設定されています。
安いバイキングと高いバイキングでは、料理の内容や種類が異なることと同じです。
4.全国共通の計算ルールに基づく
この診断病名によって定められる一日の医療費は、日本全国どこの病院でも同じ計算ルールに基づいていますので、DPC対象病院であるならばほぼ同じです。
「ほぼ」としたのは、厳密には違うのですが、同じと考えてもらっても支障がないためです。
また、診断病名ごとに定められた一日の医療費は多くの症例から導き出された最も順当な値であるため、高すぎたり低すぎたりといったことはありません。
そのため、DPC対象病院だからといって出来高の病院より割高になるということは少ないのです。
5.本記事のまとめ
- DPCは包括払いという入院費の計算方法である
- 従来のものは出来高払いで医療のアラカルトである
- 投薬など一定の医療が包括され一日の医療費が定額になる
- 一日の医療費は診断された病名によって決められ額が異なる
- 全国共通の計算ルールに基づいておりDPC病院同士の違いはほぼない
6.おわりに
以上、DPC制度について説明してきました。
内容はあくまで一般の方向けに対してわかりやすさを重視して記載してきましたので、実際と少し異なったり説明が足りなかったりする部分もあります。(同業者の方はツッコミご勘弁を)
随時加筆修正していきますので、適宜アクセスしていただけると幸いです。
なお、疑問に思ったり医療費が不安だったりする方はご入院される病院の医療事務員の方にご遠慮なくお聞きしてください。
きっと懇切丁寧に説明してくれるはずです。
お気の毒にも入院せざるを得なくなった方が気を回さなければならないことは、医療費ではなくお身体自身です。
不明なポイントはすぐさま解消し、治療に専念できるよう環境を整えていきましょう。