高校生の方や、大学を出たけれど手に職をつけたいと考える方などは専門学校への進学を視野に入れる方も多いでしょう。
気になった職種の資格が取れる専門学校を調べ、パンフレットを取り寄せたりホームページを見たりして穴が開くほど研究していくうちに
「この資格を取ったら輝かしい未来が待っているんだ!」
と嬉しい気持ちにさせてくれますね。
でも少し待ってください。
専門学校から与えられる業界の情報は、いいことしか書いていません。
なぜいいことしか書いていないのでしょうか?
元専門学校教員である筆者が詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただき、進路の参考にしてください。
目次
1.入学してもらいたい
当たり前ですが、専門学校の運営は学生からの入学金や授業料で賄われているため、学生募集に命懸けです。
なんとしても学生を集めなければならない、そのためには学生が目指すその先の業界が明るくなければならないのです。
誰もお先真っ暗な業界には進もうとは思いませんよね。
まれに、eスポーツや声優の専門学校などは卒業生全員が一定の暮らしができる保証なんて一切ないお先真っ暗な業界であるにも関わらず、その職種の人気ゆえにたくさんの学生が集まるケースもありますが・・
蛇足ですが、eスポーツや声優などの専門学校は、最初から学生の将来を保証する気なんてさらさらありません。
人気と実力の業界の職種が学校に行っただけでプロのゲーマーや声優になれるわけないのです。
それらの専門学校は自分たちが儲けたいために学生を集めているにすぎませんので、よく考えて進路を選択してください。
少し脱線しましたが、専門学校で取得できる資格の業界の将来が明るく、安定しているということをアピールすることによって学生募集につながるため、学校側は業界の良い面ばかりを伝えてきます。
2.そもそも業界を把握していない
そのようにパンフレットやホームぺージ、またオープンキャンパスなどで専門学校の教職員は業界の良さを必死に説明してくれますが、そもそも専門学校が業界の最新の事情を把握してはいません。
どれだけ業界誌で勉強していても、現場に身を置く人とは比べ物にならないほどその情報量は少ないです。
毎年学生を企業等に就職させる際に、その企業の就職担当者や人事部の人との交流はあるでしょうが、その程度の情報しか持っていないのです。
たまに業界の人と交流し、幾分か会話を交わすだけで得られる情報はたかが知れています。
また教職員たちは資格を取るための授業や学生募集に必死なため、業界の最新事情を勉強する暇はありません。
3.データは真実でも解釈に偏りがある
専門学校のパンフレットやホームページには、たとえば有資格者とその資格での就職先の数を出し、
「職場の数に対して有資格者が足りない!」
といったように、その資格がまだまだ需要があるようなデータの見せ方をしているところもあります。
有資格者数と職場の数など提示されているデータは真実であるにせよ、本当に現場が「まだまだ足りていない!」と感じているかどうかは別の話です。
一般的に医師や看護師また介護士や保育士などは慢性的な人出不足であることは周知の事実ですが、あまりニュースなど話題にもならないような資格が人手不足で売り手市場なわけがありません。
ましてや、有資格者はどんどん増えていく一方ですから、有資格者が多すぎて飽和している業界もたくさんあります。
4.卒業生の声はもちろんサクラ
専門学校のパンフレットやホームページには「卒業生の声」などが載っていて、
「学校で学んだことが業界で重宝されている」「この専門学校は授業が素晴らしい!」
といったような感想を載せ、いかにこの専門学校が素晴らしくて業界からの評判がいいかということ説き、専門学校を褒めちぎっている内容を見かけることもあるでしょう。
もちろん、卒業生の意見は学校側に操作された内容ですので、卒業生が本心で思っていることではありません。(本心の可能性もありますが)
5.業界の方の声ももちろんサクラ
さらに同じく専門学校のパンフレットやホームページには「業界の方の声」などが載っていて、現在業界の最前線で働く方の意見として
「ますます必要とされる職種です」「この専門学校の取り組みや教育内容は業界でも随一です」
といったような記載もよく見ますが、もちろんこれも業界の方にお願いして載せているだけのものです。
業界の方も専門学校からコンスタントに学生を紹介してもらえるなどのメリットがありますので、専門学校の広報活動に積極的に協力してくれるところも多いです。
これも蛇足ですが、あまり入職者希望者が少なく人気のない職場ほど、専門学校と仲良くする傾向にあります。
人気があって入職希望者が殺到し選びたい放題の職場であれば、わざわざ専門学校と仲良くする必要はありませんので。
6.あらゆる媒体からの情報収集を
以上、専門学校から得られる情報ではその業界の真実を知ることは不可能です。
もっと中立な立場からの分析結果や事実を紹介しているホームページや書籍に目を通すようにしてください。
肝に銘じておいてもらいたいことは
「商品をおすすめしてくる人からその商品を買うな」ということです。
自分の商品を勧めてくる人が第一に考えていることは「自分の利益」です。
もしかしたら、第二にあなたの人生のことを考えてくれているかもしれませんが、それは第一の自分の利益からはるか差をつけての第二です。
専門学校が考えていることは自分たちの利益を第一に考えて学生に入学してもらいたいため、あなたに自分たち専門学校の良さを熱心にアピールして勧めてくるのです。
本当に素晴らしい商品は、その人に勧めるメリットがなくてもあなたに勧めてくれます。
7.おわりに
ここまで書いてきましたが、専門学校の全て悪いということではもちろんありません。
専門学校からの情報ではその先にある業界の正しい事情を得ることはできないため、いろいろな角度からその業界について調べることが大切ということです。
たくさん調べた上で、それでもその業界に進みたいのであれば、その業界の資格が取れる専門学校なり大学なりに進めばいいのです。
進路を決めることは大変に大きな決断ですし大金と時間がかかります。
いい加減に考えるのではなく、将来を見据えてしっかりと下調べをし、多くの人の意見を聞いて判断するようにしていきましょう。