高校生の方や大学に通っているけどどうもしっくりこない方などは、進路に専門学校を候補に入れることも多いことでしょう。
専門学校のパンフレットやホームページ、またオープンキャンパスでは
「国家試験合格率100%」や「就職率100%」
といったような実績を誇らしげに掲げています。
それらの実績を見ると
「この専門学校に入ればちゃんと資格が取れてしっかり就職まで面倒みてくれそうだ」
と感じますね。
ですが、その判断を下すにはちょっと待ってください。
専門学校が提示するそれらの都合の良い数字は嘘の数字である可能性があります。
嘘の数字とはいったいどういうことでしょうか?
この記事では元専門学校教員である私が、専門学校が提示する数字の真実についてお伝えしていきます。
専門学校を進路の候補として考えている人には大切な情報ですので、ぜひ最後までお読みください。
1.合格率の嘘
専門学校にはそれぞれ最終的な目的とする国家試験などの資格試験があります。
パンフレットなどにはよく「試験合格率100%」とでかでかと書かれているのをよく目にするかと思います。
ですが、それらはほぼ間違いなく嘘の数字です。
一般に、「試験合格率100%」と聞けば、「その専門学校に入学した人が全員試験に合格している」と捉えてしまいますが、もちろんそんなことはありません。
合格率100%がどのような計算式で導き出されているのかというと、母数が「入学した人全員」ではなく、「受験した人全員」であり、かつ専門学校側は試験に受ける受験者をふるいにかけているのです。
1-1.入学者数と受験者数
入学者数とは、文字通り「その専門学校に入学した人の人数」です。
そして入学者数はほぼ間違いなく減っていきます。
18歳の高校生が選んだ進路ですから、「思っていたのとは違っていた」ことはよくあることです。
そのため、卒業年の最後にある試験時には入学時と比較して結構な人が辞めている状況です。
入学者数から減った人数であるにも関わらず、さらに受験者数を絞っていこうとして、上図のように、国家試験など本番の試験を受けさせる前に模試を複数回行い、学校の定める基準に達していない学生を受験させないのです。
1-2.受験をさせてもらえない
合格基準に達した学生のみが本番の試験を受験させてもらえるのですから、合格率100%になるのは当然ですよね。
学生からクレームが出ないよう専門学校側もいろいろ考え、”卒業試験などを設けてそれをパスできない学生を留年させる”などすることによって、本番の試験を受験させないようにしているのです。
しかし、たいていは普通に授業に出席さえしていれば合格基準に達しなくても卒業させてくれるところがほとんどでしょう。
学生をなんとか説得して、もっともらしい話をつけて本番の試験だけは受験させないようにするのです。
合格率100%を達成するために。
ですが、学生に試験を受験させないということは法律的に縛れるものではありません。
とはいえ、一番はちゃんと勉強をして合格基準に達することですので、余計な法律論を掲げるのではなく、しっかり勉強することに注力してください。
ちなみに、これを読んだ時点で専門学校に入学する前の方は、オープンキャンパスなどで「本番の試験を受けさせてくれないなんてことはないですよね?」と言ってあらかじめ先手を打っておきましょう。
2.就職率の嘘
試験の合格率に続き、就職率100%もほとんど嘘の数字です。
学生全員が希望の就職先に就職できたように見せていますが、そんなことはもちろんありません。
複数の就職先を受験させてくれる場合、名前を書いただけでも合格できる就職先もざらにあります。
そんなところを受験させておいて「就職率100%」と言うのです。
または、どうにもこうにも箸にも棒にも掛からず内定をもらえない学生を、教員のコネがきく職場に無理やり放り込むということもあります。
さらには、学生の中には就職をせずにバイト先でその存在を必要とされることに快感を覚えてフリーターになる人や、自分を探すためにワーキングホリデーに行く人などが一定数出てきます。
そういった学生は就職率の計算(母数)から除外するのです。
3.本記事のまとめ
- 国家試験などの合格率は数字を操作している
- 率を算出する母数は入学者ではなく受験者である
- 模試などを設け試験を受けさせないところも多々ある
- 試験を受けさせないことは法律的には拘束力は一切ない
- 就職率ももちろん操作された数字であり手が込んでいる
- 学生全員が希望通りの職場に就職できるなんてことはない
- 本人が就職希望しない場合は就職率の計算から除外される
4.おわりに
以上、専門学校の提示する数字のマジックについてお伝えしてきました。
私が教員だったときは、オープンキャンパスで高校生をだましているような気持になり、大変罪悪感がありました。
入学者を選ぶことができず、誰でも入れるような専門学校が試験の合格率や就職率が100%なわけがありません。
もちろん、この記事に書いたことは専門学校だけではなく、大学にも当てはまるでしょう。
入学をする前に事前にしっかりと下調べをし、パンフレットや職員が言っている都合の良い言葉ばかりを鵜呑みにせず、デメリットをたくさん聞いてから考えるようにしましょう。