日本トップクラスの医療法人である「徳洲会」。
全国の至るところに巨大な病院を建て、24時間365日休まず患者さんの診療を担っていますが、実際に働くとなったらどうなのでしょうか?
この記事では、徳洲会に医療事務として10年間勤務した筆者が、その実態や所感を述べていきます。
内容によっては過激なものもありますが、あくまで事実の提示であり、徳洲会を誹謗中傷する意図はないことをあらかじめお伝えしておきます。
筆者は医療事務でしたが、徳洲会自体の風土や方針などにも言及していますので、多職種の方に参考となる内容になっております。
就職や転職を考える方の一助となりましたら幸いです。
目次
1.徳洲会とは?
徳洲会は、徳之島出身である徳田虎雄氏(2024年7月10日逝去)により開設された医療法人であり、大阪府松原市の「徳田病院」を起源とします。
徳田病院以降、診療所や病院が少ないいわゆる「医療過疎地」を中心に大規模な病院を建設し、その地の医療を引き受けてきました。
その実績は計り知れず、国が成し得なかった離島へき地の病院建設を実現させ、多くの地域住民から親しまれているのです。
2.給料は安いのか?
徳洲会の給料は他病院と比較してぶっちゃけ「安い」と言えます。
やはりこれだけのスケールを誇りながら全国展開していくにはどこかに無理を生じさせる必要があり、それが職員の給料という最も大切にしなければなないところにしわ寄せがきているのです。
基本給が少ない上に昇給は年2,000円程度ですから、残業や夜勤で稼ぐしかありません。
ボーナスも3ヶ月程度と少なめです。
もちろん徳洲会より安い医療機関もありますから、上を見ても下を見てもキリがありませんね。
このように、徳洲会は人件費率を低く抑えているため、設定されている人員配置も少なめです。
つまり業務量に対し、割り当てられる人員数を少なめにしているため、一人ひとりの業務量が大変多くなりますので、残業必至です。
筆者が勤めていたころは定時退勤など夢のまた夢でした・・
ちなみに、住宅手当は賃貸に限り24000円まで補助されますから、これは相場的には少なくはないでしょう
3.休みは少ないのか?
徳洲会の年間休日数は110日です。
これが多いのか少ないのか、数字だけではイメージが湧きにくいですね。
たとえば土日祝休みの職場であれはその日数は年間125日になりますので、比較すると15日少なく、月換算だと2日も少ない計算になります。
年間休日に加えて、有給休暇と夏休み休暇3日がありますが、これはどこの組織も同じですね。
まだまだ4週6休だったり、土曜は隔週休みだったりしているところあるので、それに比べたら休みは多いといえるでしょう。
加えて徳洲会のほとんどの病院が救急病院なので、24時間365日診療しています。
お盆や年末年始ももちろんです。
シフト制で110日の休みではお盆や年末年始も働くのが当たり前で、希望休は取り合いになるか、取っても批難の嵐です。
4.有休休暇の取得は可能か?
現在は最低でも年間5日の有給休暇の取得が義務付けられていますので、巨大組織である徳洲会がこれをも守らないわけにはいきません。
ですがそれ以上の有給休暇は取得できるのでしょうか?
実は徳洲会に限った話ではありませんが、シフト制だと有休は取りにくい印象があります。
わざわざ有休をとらなくてもシフトを動かして公休で休めばいいという考えがあるからです。
シフト制は患者さんの医療を提供する上で不可欠な反面、働く職員にとっては過酷なシステムなのです。
元より徳洲会は個人の業務量が多いため、有給休暇はなかなか取得しずらいのが現状です。
5.福利厚生は整っているか?
徳洲会に勤める最大の魅力はその福利厚生にあります。
海外への職員旅行は仲の良い同期と一緒に行くことができ良い思い出ですが、福利厚生の1番の魅力はなんといっても「徳洲会の病院に受診した場合、月額3000円以上はかからない」というところです。
自分の勤める病院だけでなく、全国の徳洲会ならどこで受診しても3,000円以上はかからないのです。もちろん外来でも入院でも両方です。
注意点としては、保険診療の範囲内であることと、一旦は正規の費用を支払ったのち給料で還付されるため、窓口負担金が3,000円で収まるわけではないことくらいです。
そしてこれが、職員の両親や配偶者、祖父母や兄弟まで適用されるのです。
(二親等以上は少し減額)
これはかなりのメリットです。
徳洲会病院は規模が異なりますので、ご自身の勤める病院に希望する診療科がなければあるところを探して受診すればいいのです。
民間の医療保険に加入するか必要がないくらいの破壊力ですね。
6.患者さんの雰囲気はどうか?
これは地域の患者さんの性質にもよるでしょうが、徳洲会は民間の市民病院的な役割を担っていますから、受診へのハードルが低くいろんな人が気楽に受診してきます。
中にはやっかいな患者さんもたくさんいますが、徳洲会は「断らない医療」を理念に掲げていますので、よほどのことがない限りは引き受けざるを得ません。
それが働く職員の誇りでもあるのですが、大変なことは事実です。
筆者が勤めていた病院は、患者さんの怒号を聞かない日はなかったほどです。
無理難題を要求し、それが通らない場合は所かまわず喚き散らすような患者さんを多く見てきました。
申し上げた通り、これは地域性に左右されますので、徳洲会だからというわけではないと思います。
しかし、徳洲会以外の医療法人が建てたくないような地域に病院を建てているのかもしれませんね。
大学病院なら患者さんも「よそ行き感覚」でアウェー感を持って大人しくしている人でも、地元徳洲会なら「ホーム」と捉え、オラオラと本領発揮をするのではと考えます。
7.全国に転勤させられるのでは?
徳洲会は日本全国に病院がありますので、転勤の可能性はゼロではありません。
しかし筆者の肌感覚からすると、仕事ができなかったり問題を起こしたりするやっかい者が転勤させられ、仕事を特に問題なくこなしていたり、結果を出している人は転勤させられません。
優秀な人をその病院が手放すわけありませんよね。
稀にキャリアパスの観点から、転勤を命じられることもあるでしょうが、昇進が約束されているのであれば甘んじて受け入れることもできるでしょう。
また逆に配偶者の転勤などで転居せざるを得ない状況になった際、転居先近くの徳洲会病院に転勤させてもらえることも可能でした。
転居先で一から転職活動をするよりは、勝手知ったる風土のグループ病院に転勤する方が楽ですし徳洲会側にとってもメリットは大きいです。
その辺りを臨機応変に対応してくれるのは大組織ならではのスケールメリットですね。
8.昇進は年功序列かそうでないのか?
徳洲会はその過酷さから人が長続きしません。
そのため中間層がすっぽり抜け落ちているところが多く、毎年新卒採用を大量に募集します。
激務に耐え抜き退職しなければ、周りが勝手に辞めていきますので比較的昇進の可能性はあると言えるでしょう。
また年功序列というよりは実力主義的なところがありますので、積極的に業務に邁進していれば、先輩たちを追い越して昇進することとも十分あり得ます。
9.選挙活動に動員させられるのでは?
徳洲会は徳田虎雄氏が理事長の時代から選挙活動に一生懸命でした。
新たな病院を開設していくには政治力が必要であるという考えのもと、幾度となく政治家に立候補し、当選したりしなかったりを繰り返してきました。
なにが問題かというと、職員が選挙活動にその都度駆り出されていたのです。
給料を支払われながら、戸別訪問してビラを配ったり後援会参加の署名をお願いしたり、辻立ちして挨拶運動をしたり、とあらゆる選挙活動を職員が半強制的にさせられる時代がありました。
筆者も担当することとなり、休みなく毎日朝から晩まで選挙区を駆け巡る日々を余儀なくされました。
ですがこれらは立派な公職選挙法違反です。
すでに白日のもとにさらされており、以降の職員が選挙活動に動員されることはなくなりました。
またこれをきっかけに徳田虎雄氏は理事長を退いています。
今後は徳洲会に入職したからといって選挙活動をさせられることはありませんのでご安心ください。
10.悪いイメージはつきまとうのか?
徳洲会イコールブラックや選挙活動の印象を持つ方が多くいらっしゃいますので、ぶっちゃけイメージはよくありません。
そもそも病院を建設しまくっていることから地元医師会からは嫌われており、マスコミの餌食なのです。
ですが実際に離島へき地に病院を建て、地域の患者さんの命を救っていることは紛れもない事実であり、称賛されるべきです。
しかしながら、医師会等の嫌われ者であることから、どれだけ素晴らしいことを実践していても報道されることはなく、ミスばかりが取り沙汰されるといった悲しい立場です。
11.本記事のまとめ
- 離島へき地に病院がある
- 給料は高くないが残業で稼げる
- 休みは多くないが少なくくもない
- 有給休暇は5日はとれるがそれ以上は??
- 医療費月3,000円が究極至高の福利厚生である
- 患者さんの雰囲気はその土地それぞれ
- 全国転勤はほぼ無いと言える
- 昇進は実力で評価される
- 選挙活動はもうない
- イメージは苦笑
12.おわりに
以上、徳洲会で働くことについて述べてきました。
とはいえ筆者は徳洲会の一つの病院しか経験していませんので、グループ病院とはいえそれぞれに特色が異なることは事実ですし、上司一つを取っても環境が変わることもしばしばです。
筆者自身としては、世界レベルの名医と一緒に仕事ができたことは大きな財産として今でも大切に思っています。
本記事はあくまで参考程度とし、ご自身の就職活動に役立ててください。
また思い出し次第、加筆修正していきますのでお楽しみに。